2015年12月 1日(火)

ワイン

ローマっ子が愛する白ワイン フラスカーティ

「フラスカーティは『法王のワイン』と呼ばれるほど有名であり親しまれている白ワインだが、常に華やかな道を歩んできたわけではないんだ。」

そう切り出したのは、フラスカーティで最も有名であり最大の造り手フォンタナ・カンディダ社醸造責任者のマウロ・メルツさんだ。

 

▼マウロ・メルツさん

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フラスカーティはワインの名前でもあり、ローマの南東約20kmに位置する町の名前でもある。フラスカーティから5~6km南に行くとローマ法王の避暑地として知られるアルバーノ湖があり、フラスカーティのワインは法王やローマっ子に愛され続けているワインだ。

 

「この土地は海からの風により病害も少なく、かつては火山の噴火口だったアルバーノ湖周辺のミネラルを多く含む火山性土壌や、温暖で乾燥した気候といったブドウ栽培に理想的な環境だ。

歴史をさかのぼれば、フラスカーティは2000年以上前の古代ローマの頃から美食家や皇帝たちの舌をうならせる銘酒として知られていたんだ。

しかしその後ローマ帝国の滅亡とともにブドウ畑の数は激減し、何百年も荒れ果てたままの土地が残された。ようやく中世になってわずかな苗木からブドウ栽培が復活し始め、かつての栄光を徐々に取り戻した。

 

そしてその味の良さが認められ、イタリアのDOC(原産地統制呼称)が制定された1966年に、最初に認証を受けた栄誉ある四つのDOCの一つとして“フラスカーティDOC”が選ばれたんだ。その後押しをうけて60年代後半~70年代にフラスカーティは大流行し、飛ぶように売れた。」

 

 

 

 

 

                                                                            ▼長い歴史を感じさせるフォンタナ・カンディダ社の旧カンティーナ

Vecchia Cnatina.jpg

 

しかしここで笑顔だったマウロさんの表情が曇り、一つ深い溜息をついた。

「ただ、素晴らしいフラスカーティを造るワイナリー達の一方で、残念なことに流行に乗じて質より量を重視した低品質のフラスカーティも出回り始め、いつの間にか安くて薄いワインのイメージがついてしまった。

農家はブドウを量り売りしていたため、一粒一粒の味が薄くなろうがDOCの規定内であれば良いという考えで、とにかく大量に栽培するようになっていった。この問題に直面し、1958年の創業以来品質にこだわってきたフォンタナ・カンディダ社は、価格競争によるフラスカーティDOCの低品質化に歯止めをかけなければならないと考えた。

自社畑は自分たちで手入れができるが、農家から購入するブドウの質を上げるには農家の意識を変えなければならない。そこで、ブドウの質に応じてキロあたりの購入額を変えることにしたんだ。より良いブドウを供給すればより高く買い取ってもらえるとわかると、農家も品質向上に努めるようになる。」

 

とは言え、量を減らすリスクを背負ってまで、農家に向上するかわからない品質を追い求めてもらうには相当な労力が必要だろう。

 

▼株密度を上げ、収量を減らしブドウ果の品質を向上させている

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「もちろんそれは簡単ではなかったよ。なにをどうすれば良いかわからない農家も多かったしね。

だから我々がチームを作って各農家の畑を回り、株密度を上げたり剪定で収量を抑えたりすることでどれだけ効果が出るかを教えていったんだ。

その努力の甲斐あって、今購入しているブドウの質には非常に満足しているし、我々が求めるワインの味わいを保つことができているよ。

 

そしてなんと2011年にはフラスカーティDOCのみならず、フラスカーティ・スペリオーレDOCG(保証付き原産地統制呼称)まで新たに制定され、私たちの自慢の単一畑から造られる“サンタ・テレーザ”フラスカーティ・スペリオーレ・セッコなどがそのDOCGに認証されているんだ。

畑の改善の取り組みはまだこれからも続けるよ。コストは当然かかるが、我々はフラスカーティの歴史と味を守りたいんだ。」

 

▼サンタ・テレーザの畑

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フォンタナ・カンディダ社の取り組みの結果は、彼らのフラスカーティを飲めばすぐにわかるだろう。みずみずしさとすっきりした酸が感じられるが決して薄い味わいではなく、ブドウ本来の果実味がしっかりと感じられ、一口飲むとまたすぐにもう一口飲みたくなるような飲み心地の良さがある。

フォンタナ・カンディダ社のたゆまぬ努力がある限り、フラスカーティの良さは守られ続けるだろう。

 

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