2016年12月 1日(木)

リキュール・グラッパ他

グラッパの革命児 ノニーノ 前編

グラッパを飲んだことがあるだろうか?

グラッパとは、ヴィナッチャと呼ばれるブドウの搾りかすを蒸留して造る蒸留酒で、イタリアでは伝統的な食後酒として親しまれている。

ノニーノ社は、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州にある1897年創業の蒸留所で、創業者のひ孫にあたるベニートさんと、奥様のジャンノーラさんによる家族経営によって伝統的な単式蒸留製法を守り続けるグラッパの名門である。実際に製造から販売までを任されているのはお二人の子である、エリザベッタさん、クリスティーナさん、アントネッラさんの三姉妹なのだが、グラッパへのあふれ出る情熱で三人とも話し出したら止まらなくなってしまう。メモを取りきれないので、と止めようとしても、生半可な制止では振り切られてしまい、ノニーノ三姉妹のトークショーの舞台に放り込まれた気分になる。ベニートさんは、そこにさらに加勢するジャンノーラさんと三姉妹とのやり取りを常に温かい目でじっと見守っている。話が止まらない、というのも、来年で120周年を迎えるノニーノ社にはそれだけ語ることがあるからだ。

 

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▲ノニーノ3姉妹

 

ノニーノ社は、グラッパ界に二度も偉業とも言える革命を起こしている。
「ひとつは、一種類のブドウ品種の搾りかすだけを使った“グラッパ・モノヴィティーニョ”をイタリアで初めて造ったことだ。」
ベニートさんが懐かしむような顔で語りだした。
「我々は代々グラッパを伝統的な手法で造り続けていたが、1960年代に大手蒸留所がグラッパの大量生産を始め、1970年代にはウォッカブームがイタリアで巻き起こったことで大衆的なグラッパの質もイメージも落ちてしまっていた。我々は「イタリアの固有性を保ちつつ、上質なコニャックのような高品質な蒸留酒を造りたい」という思いから、地ブドウのピコリットだけを100%使用したグラッパを考え出し、“モノヴィティーニョ(単一ブドウ)”シリーズとして様々な品種で造っている。今では単一品種のグラッパはどこにでもあるが、実は我々が始めたことなんだよ。」
 
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▲ジャンノーラさん 前にあるのはモスカートのヴィナッチャ、手に持っているのは、モノヴィティーニョのグラッパ・モスカート
 
時おり「そう!そうなのよ!」といった合の手は入るが、歴史を知る父の重みのある言葉に女史たちも静かに聴き入っている。
「もうひとつは、アクアヴィーテを生み出したことだ。アクアヴィーテは、搾りかすになる前の、発酵を終えてまだ果皮や種が混ざった状態のブドウ果汁を蒸留したものだ。ブランデーやコニャックと同じ発想だね。ただしそれらは、果皮や種を取り除いてから発酵させたブドウ果汁を蒸留するから若干違いがある。いろいろ試してそこに行き着いたんだが、グラッパよりも柔らかくフルーティーで、ブランデーやコニャックのように木樽で熟成させなくても美味しい蒸留酒を造りたかったんだ。初めは、「搾りかすではなくブドウを丸々使うなど考えられない。ワインとして売れるのになんてもったいないんだ!」と言われて周囲のグラッパメーカーから理解が得られず、我々が単独で政府に申請して製造と販売の許可をもらったんだ。その結果がどうなったかは、今イタリア全土でアクアヴィーテが当然のように売られているのを見ればわかるだろう?ちなみにこのシリーズの名前はフリウリ方言の“UE”(Uにアクセント記号がついて“ウエ”または“ウーエ”)で、イタリア語で“UVE”(ウーヴェ)という意味なんだ。」
 
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▲上:アクアヴィーテ UE 下:蒸留釜
 
 
後編へつづく…

 

ノニーノ社についてはこちらもご覧ください。

http://www.montebussan.co.jp/wine/nonino.html

 
 
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