2018年09月10日(月)

リキュール

ミラネーゼはアペリティーヴォがお好き

イタリア独特の食生活の一つにアペリティーヴォ(食前酒)がある。特にここミラノではアペリティーヴォが盛んだ。イタリアの夕食は20時~21時スタートと遅めだが、その1~2時間前に集まり、みんなで軽く一杯、食前酒を飲みにいく。


「アペリティーヴォしようよ」
これがミラネーゼ達のお決まりの一言なのだ。


イタリア語のアペリティーヴォという単語は、実はただの“食前の一杯”という意味ではない。「アペリティーヴォする」と言うとお酒だけではなく、軽食を取ることも含まれるからだ。


たいていのお店ではドリンク一杯を頼むとちょっとしたおつまみがつく。最近ではおつまみだけではなく、ビュッフェ形式のお料理がついているところも多くあり、お金のない若者達が夕食代わりに利用して人気のお店も多い。事実最近のミラノでは、アペリティーヴォならぬアペリチェーナ(アペリティーヴォとチェーナ=夕食をくっつけた新しい造語)なんて言葉まで生まれている。

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▲街中でアペリティーヴォを楽しむミラネーゼ達

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アペリティーヴォで最もよく飲まれている定番ドリンクの一つはスプリッツだ。オレンジ色が鮮やかな柑橘系のリキュール“アペロール”と白ワインorスパークリングワイン、ソーダなどを加えるのが一般的。


しかし、カクテルブーム最中のミラノでは、最近はアペロールではない別の柑橘系リキュール、”アペリティフ”を使って造るこだわりのお店が増えてきた。”アペリティフ”は、人工的な着色料や甘味料は一切使わず天然の原料のみを使用しており、食品や飲み物の安心・安全を求める声が高まる中でこういった需要は増えているようだ。

 
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▲アペリティーヴォといえばスプリッツ(写真左)

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▲アペリティフ。やわらかいオレンジ色と、自然な甘みが特徴。

 

最近ミラネーゼ達の間では、このスプリッツに加えてもう一つのカクテルが流行になりつつある。
ジントニックだ。


おそらく流行りだしたのはヴェローナのほうが先だと思う。スプリッツというカクテルが生まれたのも一説ではヴェローナ。ヴェローナは近年イタリアでもカクテル文化が特に良く根付いている街のように思う。そしてそれを追いかけるように、流行に敏感なミラノではすでにクラフトジンを数多くそろえるバールが5軒ほど出来ていて、こだわりのクラフトジンで造るジントニックを飲みに、お洒落なミラネーゼ達が集まっている。


ジンは、ジュニパーベリーという植物の実が漬け込んであることが条件で、それ以外にどんなボタニカル(ハーブやスパイス、植物の実など)を加えるかは自由。イタリアにもこの5年ほどで多くのクラフトジン生産者が創業していて、それぞれの生産者の個性が詰まったクラフトジンが多い。

 
   
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▲おしゃれな雰囲気の漂うジン専門カクテルバー『Gin012』

 

この日行ったミラノのジン専門カクテルバー“Gin012”でお勧めしてもらったこのサバティーニ・ジンもイタリアのクラフトジンのひとつ。バーテンダーのジョヴァンニさんは、「このクラフトジンはトスカーナ原産にこだわっています。ジュニパーベリー以外にもローズマリーをはじめとした複数のボタニカルを漬け込んでいますが、全てトスカーナ産です。とても爽やかで夏らしいジンですね。」と説明してくれた。


確かに飲んでみるとすっきりとした清涼感のある味わい。ジュニパーベリーの香りとともにローズマリー、セージ、ミントなどが上品に感じられ、トスカーナの新緑に囲まれたような爽やかな余韻があり、ミラネーゼ達にも人気のようだ。

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▲サバティーニ・ジンをシンプルにジントニックで。ボタニカルの個性が上品に際立つ。

 

アペリティーヴォはミラネーゼにとって欠かすことの出来ない生活のワンシーン。夕食のレストランに向かう前だけではなく、友達と楽しくおしゃべりしたい時、ビジネスマン同士の仕事後の一杯やカップルのお洒落なデートにも使われる。ミラネーゼは近年このアペリティーヴォを充実させるこだわりのカクテルに凝ってきているのだ。さあどうだろう。イタリア好きな読者の皆様も今日はミラネーゼたちの流行にならって、最初の一杯をこだわりのジントニックで始めてみては?

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