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2019年04月 5日(金)

フード

アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ・ディ・モデナDOPの最高峰、アチェタイア・カゼッリ社②

 バルサミコ酢はいまや、日本の食卓にも並ぶことの多い調味料として広く浸透したと言えるだろう。
イタリア人もバルサミコ酢をこよなく愛し、家庭だろうとレストランだろうと、あらゆる食卓においてバルサミコ酢の存在しないところは無いのではないだろうか。


 そんなバルサミコ酢の真髄を探るべく訪問したモデナのカゼッリ社。
当主のシモーネさんはバルサミコ酢の最高級品アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ・ディ・モデナDOPの造り方も説明してくれた。

 
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▲当主のシモーネさん

 

「アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ・ディ・モデナDOPは、普通のモデナ産バルサミコ酢IGPやコンディメントとは全く別物といっても過言ではないね。」
「まず原材料はブドウジュースを煮詰めたもの(モスト・コットと呼ばれる)を100%使うことが義務付けられているよ。他には一切、何も加えないんだ。」
「バルサミコ・トラディツイオナーレDOPはその後特別な方法で熟成させるんだ。熟成はバッテリーエと呼ばれる5個以上の大きさの違う樽で行うんだよ。」


「これがバッテリーエだね。」
そういうと、シモーネさんは小さな樽が並んでいるひとまとまりを指差した。さながら樽のマトリョーシカのようだ。

 
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▲ずらりと並ぶバッテリーエ

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▲補充の流れ

 

「まず、仕込みを始める年に収穫されたブドウのモスト(果汁)を煮詰めた後にこのバッテリーエの中に入れ、残りは母樽(Botte Madreと呼ばれる)という大きな樽に入れるんだ。バッテリーエの樽の中には大体7割くらいまでしかモスト(果汁)は入れず、そのまま一年熟成させるんだよ。」


「当然1年経つと、樽の中のバルサミコ酢は目減りしている。これをまた7割の量まで戻すのだけれど、補充の仕方は決まっているんだ。
一番右にある最も小さい樽には必ずそのすぐ左隣からバルサミコ酢を抜いて補充。右から2番目の樽には、またそのすぐ左隣からまた目減り分を補充。こうやって目減り分をすぐ隣の樽から補充して、一番大きい左端の樽には、母樽からバルサミコ酢を補充するんだよ。そうやって補充が終わったらまた1年熟成させる。」


「これを最低でも12年繰り返し、ようやく12年目に一番右側にある小さな樽から、ごく少量のアチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ・ディ・モデナDOPが手に入るんだ。」


 ・・・12年。なんとも気の遠くなるような時間だ。唖然とした顔をすると、シモーネさんは更にいたずらっぽく笑いながら説明を付け加えてくれる。
「バルサミコ・トラディツィオナーレDOPの最高峰はエクストラ・ヴェッキオと呼ばれる超長期熟成タイプだよ。こっちは最低25年以上の熟成さ。今説明した作業を25年間ひたむきに続けて、ようやく手に入るものなんだ。」

 
   
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▲公式に “エクストラ・ヴェッキオ”と認められたもののみ、瓶に金のキャップをつけることができる(左)。同様に赤キャップ(右)は12年以上の熟成を行ったという証。

 

 毎年モデナバルサミコ協会が、このバルサミコ・トラディツィオナーレDOPの品評会「パリオ」を開催している。そこでは毎年12の優秀生産者が選ばれ、この優秀生産者のみが、10年に一度の「スーペルパリオ」と呼ばれる決勝大会への出場権が与えられる。


通常の「スーペルパリオ」では10年間のパリオの優秀生産者たちが出場するのだが、1999年に、1969年~1999年の30年間の優秀生産者たちが集まった「スーペルパリオ」の30周年記念大会が開催されたときに、実は、シモーネさんが最優秀賞を獲得している。
まさに、レジェンド生産者達の頂点に立った生産者なのだ。


 シモーネさんはこう話す。
「私は全て自社畑のブドウだけを使って、最高の原材料だけを選んでバルサミコ造りをしているんだ。これが我が家に代々伝わるやり方だからね。私にとってバルサミコ造りとは、会社を大きくすることではなく、家族の伝統と品質を守り続けること。それに尽きるんだ。」
話しぶりからも彼のひたむきな職人魂が感じられる。

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▲スーペルパリオ30周年記念大会で最優秀を獲得したバルサミコの樽

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 バルサミコ・トラディツィオナーレDOPはほんの数滴かけるだけで、味わいを劇的に変えてくれる。 


 もちろんシンプルに、熟成したパルミッジャーノ・レッジャーノチーズに数滴垂らすのも良いが、やはりパルミッジャーノ・レッジャーノチーズを使ったリゾットに数滴ずつかけるのをお勧めしたい。リゾットに温められてふわっと立ち上る、ブドウ本来の甘みのある香りと、黒いベリーやシナモン、クローブなどの甘いスパイス、木樽などの複雑なニュアンス。


パルミッジャーノチーズの柔らかく酸のある味わいに甘酸っぱいバルサミコが調和し、更に味わいに丸みを与え、一体感を増して口の中に広がる。
チーズのリゾットの、ややもすると単調になる味わいを、まるでバルサミコ・トラディツィオナーレDOPが加わることで完成形にしてくれるような感覚さえ感じることだろう。


 真摯に、気の遠くなるような時間をバルサミコと向き合っているシモーネさんの作り出すカゼッリ社のバルサミコ・トラディツィオナーレDOP、ぜひその魅力のとりこになってほしいものだ。

『アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ・ディ・モデナDOPの最高峰、アチェタイア・カゼッリ社①』はこちらから

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