皆さん、Buongiorno! そして、Piacere (はじめまして)!
今年からTANTILIAを通じてイタリアの情報を皆様にお届けする、ミラノ駐在員の稲田と申します。
どうぞよろしくお願いします。
このTANTILIAを書いているのは1月です。日本同様にイタリアも冬の真っ只中です。今回は、冬景色に包まれたピエモンテ州を皆様にご紹介したいと思います。
ピエモンテ州といえば、まず思いつくのが甘口微発泡ワインのモスカート・ダスティやイタリアワインの王様と呼ばれるバローロではないでしょうか。
そのバローロが作られるバローロ地区の畑は、現在一面雪に覆われています。
それは普段あまり目にする機会の無い景色ですが、白銀のブドウ畑というのも風情があって本当に美しいものです。
ブドウの収穫は終わっていますが、ワイナリーの仕事はもちろん続いています。むしろ、ここからがその一年を占う正念場と言っても過言ではありません。
収穫されたブドウは、破砕・圧搾⇒アルコール発酵⇒マロラクティック発酵(ワインに含まれるリンゴ酸が乳酸に変化)⇒熟成、といった醸造の段階に向かいます。
ブドウの良さ、特徴をいくら引き出せるかということが問われますので、ワイン作りの中でも非常に重要な部分です。冬の間も次のブドウ作りの準備としてブドウの木の剪定が行われます。
ワインという生き物を相手にしている以上、一年を通してワイナリーに休みはありません。
ピエモンテ州では「カステルマーニョ」と呼ばれるチーズが作られます。 このチーズの原料となる牛の乳は、夏の暑い時期に山上で放牧された牛から絞られています。通常、2ヶ月から5ヶ月熟成されますが、夏場しか製造出来ないため生産量は非常に少量です。そのため、幻のチーズとも言われます。 弊社と取引のあるバローロの作り手にピラー社というワイナリーがあります。そのワイナリーのオーナーであるキアラさんが、カステルマーニョチーズを作っている酪農家の元へ連れて行ってくれました。 夏場はのびのびと放牧されている牛たちですが、冬場は牛舎の中でおしくらまんじゅうをするように固まりあってお互い暖めあっていました。 扉を開けるまでは静かだった牛達ですが、扉を開けた瞬間、「モ〜!モ〜!」と鳴き始めます。極寒の中で扉を開けたことに対する文句を言っているように思えました。 しかし、そんな牛達の必死な訴えもむなしく、扉を開けたまま「可愛いわね〜」と笑顔で言っていたキアラさん(写真左)と、牛達のオーナーであるアントニオさん(写真右)でした。
牛達の話をした直後ですが、周りを山々で囲まれたピエモンテ州では牛や羊、ヤギなどの肉料理が好んで食べられます。 ピエモンテ州には、トスカーナ州のキアナ牛という牛と並び評されるファッソーネ牛という牛がおり、その牛を使う前菜がBattuta di Fassone al Coltello(バットゥータ・ディ・ファッソーネ・アル・コルテッロ/ファッソーネ牛のタタキ)です。日本で言えば、焼肉屋にあるユッケを想像していただければ分かりやすいと思います。 ピエモンテ州の郷土料理を出すレストランでは、大抵のお店で前菜としてメニューに載っていますが、日本のユッケと違うのはサシ(脂身)が無い点、そして味付けです。
イタリアでは日本の様な脂身の甘味を楽しむ文化はありません。
その要因は牛が食べる飼料の違いにあります。和牛のように飼料として穀類を食べるのではなく、イタリアの牛は草を食べます。そのため、草を分解する酵素が体内にあり、独特の臭みを発します。その酵素は脂溶性であるため、いわゆるサシ(脂身)の部分に蓄積されます。したがって、臭みが感じられるそのサシ(脂身)の部分を生育の段階で極力少なくしているのです。
イタリアでは赤身を炭火焼きにしてそのジューシーさを味わったり、生のままその新鮮さを味わう文化はこういった中で根付いてきました。
余談ですが、よく羊肉をいうときにラム又はマトンと混同して呼ばれます。実際は、ラムは乳のみ羊でマトンは草を食べるようになった大人の羊のことをいいます。
話は戻りまして、このBattuta(バットゥータ)ですが赤肉のみを使用しています。そのため、生臭さは全くと言っていいほど感じられません。味付けもオリーブオイル・塩・胡椒と非常にシンプルで、赤身の美味しさをたっぷりと堪能できます。
前菜の後はPrimo Piattoとしてタヤリン(ピエモンテ州特産の手打ちパスタ)をご紹介します。このタヤリンは小麦粉1kgに対して卵黄を10個ほど使用します。モチモチとした食感ではなく、歯ごたえがしっかりしていてコシもあるのが特徴です。
このタヤリンとオイルベースのサルシッチャのラグーとの相性は最高です。バターとセージだけで作ったシンプルなソースもタヤリンを食べるときの伝統的なレシピです。秋から冬にかけては白トリュフを乗せ贅沢なメニューも登場します。
最後はトリッパ(牛の第二胃袋)の煮込みです。トリッパといえばトスカーナ州やラツィオ州の料理としてご存知の方も多いのではないでしょうか。トスカーナ州のトリッパは豆とともに煮込み、ラツィオ州、特にローマのトリッパはミントとともに煮込むのが特徴です。
一方で、ピエモンテ州のトリッパは軽くトマトで煮込んだ、シンプルで優しい味わいです。身体もしっかり暖まります。
今回、全体を通してコテコテの重い肉料理ではないものの、しっかりと味のついた肉料理だったため、フォンタナフレッダ社の“マルネ・ブルーネ”ネッビオーロ・ダルバを合わせました。マルネ・ブルーネのエレガントさと重過ぎず、それでいてしっかりとした味の肉料理との相性は抜群です。
是非とも一度お試しください。
では、また次回。
<モンテ物産 ミラノオフィス 稲田 俊介>