ヴェネト州 ヴェローナ県 ネグラール
1857年
イタリアでピエモンテ州、トスカーナ州と並ぶワインの銘醸地ヴェネト州。その中心ともいえるヴェローナの地で高品質ワインを造り続けるベルターニ社は、後にその功績によってカヴァリエーレ(=ナイト)の称号を与えられるベルターニ兄弟によって1857年設立されました。ベルターニ兄弟は当時すでにイタリア国内だけでなく「世界で」認められるワインを目指した先駆的な人物です。
数あるイタリアワイン評価本のなかでも影響力が高いガイドブックとして知られているのがガンベロロッソ。1万アイテム以上の優れたイタリアワインをブラインドテイスティングして評価するもので、最高評価のトレ・ビッキエーリ(イタリア語で「グラス3個」、の意味)をはじめとする高評価を獲得すると、世界中の注目を集めます。
そのガンベロロッソ誌最新版の2023年度版で、「ベルターニ社」が、栄誉あるワイナリー・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀ワイナリー)を受賞しました!
創業者のベルターニ兄弟は、ヴェローナがオーストリアに占領されていた、1850年から1857年の間、 フランスのブルゴーニュ地方に亡命していました。
当時のフランスは、世界で最もワイン造りの研究が 進んでおり、細菌学者ルイ・パストゥールが酒石酸や低温殺菌などの様々な研究を行っていました。 ベルターニ兄弟は農学博士のグイヨー氏に師事し、当時の最も先進的な畑の管理方法を学びました。 (グイヨー仕立ては、この博士の名前からつけられました。)
そして約150年前の1857年、ベルターニ兄弟は、故郷ヴェローナに帰国し、 今までに培った知識と経験を基にベルターニ社を設立しました。
そして1860年、当時では画期的な辛口ワイン『“セッコ・ベルターニ” ヴァルポリチェッラ・ヴァルパンテーナ』をリリースしました。
1868年、ベルターニ社は“セッコ・ベルターニ”を、 ヨーロッパ諸国だけでなく、アメリカへも輸出し 始めました。その時、ベルターニ社が、世界に イタリアワインの品質の高さを証明する手段として、 サヴォイア王家から、王家の紋章をワインボトルに 記してもよいという許可を得ました。
今でもこの紋章は、“セッコ・ベルターニ”の ラベルに記されています。
ベルターニが誇る特別なワイン、アマローネ。
畑から熟成までこだわりぬいてヴァルポリチェッラ・クラッシコ地区の中心に、65haにわたって広がるTenuta Novare(ノーヴァレ農園)には、コルヴィーナ・ヴェロネーゼ、ロンディネッラ、モリナーラ、カベルネ・ソーヴィニョンなどが栽培されています。そのうち、アマローネに使用されるのは、コルヴィーナ・ヴェロネーゼとロンディネッラの2種です。(1990年ヴィンテージまではモリナーラも使われていました。)
【アマローネの畑】
アマローネ・クラッシコにはあらゆる標高に位置する、南から南東向きの畑で収穫されたブドウが使われます。点在する小さな畑から収穫したブドウを集めて醸造するため、非常に複雑な味わいを持つワインとなります。
畑は石灰質土壌で、エレガントで長熟タイプのワインを造るためのブドウ栽培に理想的な土壌です。 コルヴィーナ・ヴェロネーゼとロンディネッラはグイヨー仕立てで栽培されています。この仕立てにより、ブドウはバランスよく、ストレスなく成長することができます。
他の偉大なワイン同様、アマローネ・クラッシコもその品質は畑で決定づけられます。傷ついたブドウは陰干しにすることはできず、また何より傷のない果実の表皮には、発酵のために必要な自然酵母が付着するため、健康なブドウを栽培、収穫することはとても重要になります。 ブドウの収穫は、すべて職人の手作業で行われます。 この収穫作業は非常に重要で、格段の注意を要し、良質の健康なブドウのみを 選別しています。
万が一、雑な扱いによってブドウに傷がつくと、この後に続く陰干しの過程も すべて台無しになってしまうため、細心の注意を払って収穫が行われます。
【アマローネ-陰干し】
厳選されたブドウは、スノコの上に並べられ、風通しのよい屋根裏部屋で陰干しさせます(以前は約4ヶ月以上という長期間でしたが、現在は近年の温暖化の影響もあり、約100日前後まで短縮されています。)
特に最初の期間は、ブドウは水分を多く含み、 皮が押しつぶされる可能性があるので、最もデリケートな時期と言えます。 この時期に皮に傷がつくと、まだ気温も高く腐敗が進むのが早いため、慎重な作業が必要とされます。
陰干しの過程においては、除湿機などは一切使わず、窓の開閉によって湿度管理を行います。
また、陰干し期間中は毎日様子を見ながら、不良果実は取り除かれ、品質管理されています。長い陰干し期間を経たブドウは水分の1/3の量が蒸発し、糖度が凝縮、十分な酸とアルコール度が得られます。
また、アマローネ・クラッシコを特徴づける独特の香りもこの陰干しブドウを使って醸造することによるもので、フレッシュなブドウを使って醸造する他のワインとは全く異なる特徴を持っています。
【アマローネ-発酵、熟成】
陰干しされたブドウをさらに選別、圧搾し、ガラスコーティングされたセメント タンク内で、陰干ししたブドウに付着している酵母の働きによって、非常にゆっくりと40日以上の時間をかけてアルコール発酵させます。
長時間、モストと果皮が接触しているため、色、香りの成分やエキス分がしっかりと抽出できます。
アルコール発酵が終わると、ワインはオークの大樽(6000~8000L)で6年熟成させます。アマローネD.O.C.G.の熟成期間の規定は2年ですが、ベルターニ社ではゆっくりと時間をかけてバランスのとれた落ち着いたワインに仕上げていきます。 その後瓶詰めされ、1年以上の瓶内熟成を経てリリースされます。
ベルターニ社の最高傑作であるアマローネ・クラッシコは、単なる“瞑想のワイン(メディテーションワイン)”ではなく、ファーストヴィンテージの1958年から若いヴィンテージまでどの年代でも料理とのマリアージュを楽しむことが出来る稀有なアマローネです。ベルターニ社は、歴史・伝統や進取の精神を今も受け継ぎながらも常に新しいワインを創造し続け、創業者の願い通り世界中で高い評価を受けています。