1824年に誕生したコルヴォは、シチリアワインを語る上で欠かせないブランドです。シチリアの土着品種それぞれの特徴が最大限に表現されるコルヴォは、長い歴史を経て、シチリア、イタリアのみならず世界で愛されるシチリアワインの代名詞になりました。
19世紀頃シチリアで隆盛を誇っていたエドアルド・アッリアータ侯爵がフランスのワイン造りの深い知識を集めて、シチリアで再現すべくワイナリーを建設しました。アッリアータ侯爵は当時、アルコール度数が16度ほどあり、飲みにくかったシチリアワインのアルコール度数を12度まで下げて、エレガントでライトな飲みやすいワインを醸造。当時のシチリアの普通のワイン造りとは正反対のスタイルから生まれたのがコルヴォでした。
シチリアの土着品種それぞれの特徴が最大限に表現され、高い品質を持ちながらも魅力的な価格を実現しているコルヴォ。もうすぐ200歳を迎える今では、シチリアやイタリアのみならず世界中の食卓で愛されるシチリアワインの代名詞になりました。
また、コルヴォという名前は、その昔、ブドウ畑にやってきた一羽のカラスが毎日うるさく鳴いて人々が困っていた時、動物と話ができる修道僧が静かにしてくれるよう頼んだところ、コルヴォ(カラス)の名前を忘れずに大切にするなら二度と邪魔をしないと約束してくれた、というシチリアの神話から生まれました。
コストパフォーマンスの高さが評価を集め、販売開始から200年もの年月が経っているにもかかわらず、コルヴォはイタリア国内販売量でも常に上位に入る、イタリア国民に根付いたブランドです。
造り手である、ドゥーカ・ディ・サラパルータ社はただ価格を手ごろに抑えるだけではなく、コルヴォの品質を高めるために設備投資も積極的に行い、その価値を更新し続けることにも注力しています。
サラパルータ社の看板ワインでもあるコルヴォは、シチリア中の色々な畑から収穫したブドウを使っていますが、主に赤のネーロ・ダーヴォラが造られているシチリアの南側スオール・マルケーサエリアでは、2000年代に入ってから大規模な畑の改革を行っています。
もともとスオール・マルケーサエリアは土壌のバラツキが大きく、ブドウが均一に育ちにくい問題がありました。しかし特にコルヴォなどのベースワイン用のブドウを栽培する畑は土壌を均一化し、より安定した品質のブドウを収穫できるようにする必要があったため、当時のアグロノモ(農学士)は土壌の表層1mを掘りおこす判断をします。膨大な時間をかけ、掘り起こした土を混ぜて撒き直すという作業を行い、土壌の安定性を高めました。
また、シチリアはブドウの収穫期の気温が高いため、収穫直後のブドウを冷やすための冷却機を畑の近くに完備しました。収穫後にブドウを冷やしてから運ぶことによって温度の低い状態を保つことができ、出来上がるワインは、ブドウ本来の香りやフレッシュさが引き出されます。
太陽の日差しがとても強いシチリアならではの悩みでもある、水やり。地表に水を撒いては蒸発してしまい、根に届くのにも時間がかかりますが、地下に灌漑設備を導入したことで蒸発させずに適切に根に水を届けることが可能になりました。
醸造面でも、他のブドウ生産者との関係性も大切にしながら改革や設備投資などを数多く行い、丁寧なワイン造りが行われてきました。
ベーシックなワインでも、200年もの長い年月支持されるためには、価値を与え続けるための企業努力が欠かせません。繊細でエレガントな味わいを持ち、今なお全世界で愛されるコルヴォはまさにそれを体現しているワインなのです。