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2015年02月 1日(日)

ワイン

伝統的手法の再考による新しいワイン造りから生まれるブルネッロ・ディ・モンタルチーノ 


トスカーナ州はモンタルチーノの町からなだらかな丘陵風景を楽しみつつ車で西へ20分ほど向かうと、バンフィ社所有の“ポッジョ・アッレ・ムーラ”城がある。敷地内にはレストラン、ワインショップ、試飲カウンターなどがあり、丘の上に建っているためブドウ畑を一望できる最高の景色が楽しめる。


 


丘の上に見えるポッジョ・アッレムーラ城


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バンフィ社と聞くと、少しでも同社のワインをご存知の方はまず何を想像するだろうか。


もし『商業主義的な大量生産』というイメージなら、生産本数や敷地面積などの規模の大きさに関する情報だけが一人歩きした結果かもしれない。


 


「実際のところ、我々はモンタルチーノに2830ヘクタールの土地を持っており、ブドウ畑だけで850ヘクタールある。年間生産本数は1000万本を超える。だが、より多く生産するほど質が落ちるという考えは全くのナンセンスで、誤った考え方だ。」


はっきりと言ったのは社長のエンリコさんだ。


 「数を多く造ろうとすると通常は管理が行き届かなかったり、それぞれの畑への執着が弱くなり質が落ちるが、我々が追求し続けているのは、高品質を保ちつつできるだけ多く造ることだ。」


 高品質なワインを造るためのバンフィ社ならでのこだわりの数々をエンリコさんが語ってくれた。


 


エンリコ社長


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 【クローンの研究】


1983年、ミラノ大学と共同でブルネッロ・ディ・モンタルチーノ用のサンジョヴェーゼ種の研究を始めた。まずモンタルチーノの非常に広範囲にわたるブドウ畑を分析し、そこに600種類以上のサンジョヴェーゼクローンが存在していることを突き止めた。(ブドウの場合のクローンとは一つのブドウ品種の中でのさらに細かい品種分類のようなものであり、遺伝子操作や科学的な品種改良とは異なる。)


この中から良質かつサンジョヴェーゼの特徴を良くあらわしていると考えられるサンジョヴェーゼのクローンを15種類選別する。そしてさらに、この15種類のクローンを何年にもわたって様々な畑で栽培し、ついに彼らの畑の土壌に最も適した3種類クローンに行き着いた。そしてそれぞれの持つ特徴を組み合わせ、酸や渋味などのバランスを取って補完させ合いながら、サンジョヴェーゼ100%のブルネッロ・ディ・モンタルチーノが造られる。


 


 【ブドウ選別】


 手摘み収穫の際に選果は行うが、ワイナリーに着いた後に選果台の上で再度人の手による入念な選果を行う。選果台をクリアしたブドウは房から外され粒だけの状態になる。そしてベルトコンベアで流れつつ光学センサー付きカメラで色・形を瞬時に自動画像解析によりチェックされ、基準に満たない粒は空気銃のようなものではじかれ、不良果が混ざらないようになっている。


 


 【樽材】


バンフィ社は木樽(小樽)をそのまま買うのではなく、ただのオーダーメイドでもない。フランスに樽の原料となる木材を買い付けに行き、カットの仕方も指定する。


カット済みの木は一旦バンフィ社に運ばれ、天日干しにされる。雨ざらしになることで余分なタンニンが抜け、求める状態に仕上がったら樽加工業者に送り組み立ててもらうという、簡略化して書いてもいかに手間と労力がかかることなのかが伺えるだろう。


 


こだわりのつまったバリック樽が並ぶ熟成庫


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その他、木樽の縦置き発酵槽の上部と下部のみがステンレス製になった“ホライゾン・システム”は、バンフィ社が樽メーカーとともに特許を取っており、木とステンレスの長所を組み合わせた新システムだ。


 


ホライゾン・システム


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これ以外にも、彼らのように熱意と規模を兼ね備えていなければできないようなこだわりが、まだまだある。


 印象的だったのは、非常に温厚で落ち着いた物腰のエンリコさんは自身を持ってしっかりとした口調でこだわりについて語るが、それについての慢心は微塵も感じさせないところだ。


 「こういった様々な新技術を取り入れているとすぐにモダン派の造り手と呼ばれる。だが我々は、センセーショナルな新技術をただ導入して伝統的手法を否定したいわけではない。 経験によってしか成し得ない、ワイン醸造の素地を作ってきた先人たちに敬意を払いつつも、一旦定着した伝統的な造り方が本当に最高なのだろうかと疑問を持たなければならない。土壌と気候、品種の組み合わせや酵母の質など、研究や改良ができる点は畑ごとに常に存在する。こうすればもっと良いブドウができるのでは、と思いついたら、時には大規模なテストになっても、失敗を恐れずにまずは試すことにしているんだ。いつかそれが、誰も疑いを持たないスタンダードになっているかもしれない。」


もし本当にスタンダードになったとしても、きっと彼らは満足しないだろう。より良い手法を見つけて後世の人たちにとっての新たな良き伝統となれるよう、歩みを止めない。バンフィ社のような明確な哲学があれば、『大量生産=低品質』は成り立たない。


 彼らが良質なブドウを育てるためにどれだけ真摯な姿勢でひたむきに取り組んでいるか、バンフィ社が誇るブルネッロ・ディ・モンタルチーノを一口飲んで想像を膨らませてみてはいかがだろうか?


 


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