2015年08月 3日(月)
フード
「ナポリ」と聞くと皆さんは何を連想しますか? 風光明美な景色、ファッション、ピッツァ、パスタ…。 イタリア人に同じ質問をすると、多くの人が「カッフェ!」と言い返す。古くから異国との交易の拠点だったナポリには、早くからコーヒー文化が根付いており、イタリア国内でも特にこだわりを持った人々が多く、エスプレッソの聖地だ。個性的な焙煎とブレンドによる、豊かで奥深い味わい、余韻をともなうエスプレッソは、まさにこの町の文化と歴史と情熱によって育まれたといっても過言ではない。
ナポリと言えばヴェスヴィオ山
グラン・カフェ ラ・カッフェッティエーラにはナポリっ子が集う
イタリア人は日本人に比べ、2倍のコーヒー消費量があり、一日に3~4杯エスプレッソを飲むのは一般的だが、ナポリの人たちは、さらにその倍の7~8杯を飲む人も多い。エスプレッソが一日の多くのシーンに欠かせないものとなっているため、自宅で楽しむのはもちろん、街中のバールやグランカフェで立飲みをしながら、友人たちやバリスタとおしゃべりを楽しむ姿を多く見かける。そんなナポリ人だからこそ、豆のブランドにもこだわる。そして、そのこだわりの頂点にあるブランドがKIMBOなのだ。イタリアには16万件ほどのバールやグランカフェがあるが、ナポリはそのほかの地方のカフェと比べて明らかに違う点がある。
1つは、エスプレッソマシンだ。
エスプレッソは発明されてから110年以上になるが、エスプレッソの確立とともにエスプレッソマシンも進化している。現在の主流は抽出ボタンを押せばマシンが最適な温度と圧力を調整し、しっかりと味わいのあるエスプレッソが誰でも簡単に抽出できるようになっている。しかし、ナポリの殆どのバールで見かけるのはそれとは異なり、大きなレバーが上に向かって突き出しているクラシックなレバー式だ。
このタイプは60年以上前に開発されたものだが、レバーが重たいため扱いにくく、さらに、レバーの動かし具合によって味わいが変わっていくため、熟練のバリスタのスキルが問われることもあり、ナポリ以外の地域では殆ど見かけることはなくなった。エスプレッソには並々ならぬ思いのあるナポリ人だからこそ、バリスタたちもその人でしか再現できない特別な一杯を抽出するためにこのレバー式マシンにこだわりと誇りを持って使っている。
KIMBOの豆には、「プレミアム」という、このレバー式マシンで最良のナポリコーヒーになるように焙煎とブレンドがなされた商品がある。このブレンドはナポリ人が愛してやまない味わい、コクと苦みのバランス、そして甘みを伴う絶妙な切れと余韻になるよう調整されている。もう一つの違いは老舗のバール(とくにグランカフェ)で見かける光景に年配の男性バリスタが多い。彼らはこのレバー式マシンの歴史に負けず、この道数十年の人たちばかりだ。経験値により、彼らの動作には一切の無駄がなく、まるでダンスを踊るかの如く流れるようなたち振る舞いで、すばやくエスプレッソやカフェメニューを作っていく姿は圧巻だ。
エスプレッソの語源には「急行」という意味とともに「あなたのための特別な一杯」という意味がある。
まさに彼ら熟練バリスタの流れは、オーダー後からすばやく流れるような手さばきで、そして決して焦った感じはなく、お客様の手元にお客様好みのエスプレッソを提供し、その意味を体現していると言える。
さらに、美味しいエスプレッソを抽出・提供するため「5つのM」というキーワードを耳にする。
Miscela(豆のブレンド)・Macinare(豆の挽き具合)・Macchina(最良のエスプレッソマシン)・Mano(バリスタの技術)・Manutenzione(適切な維持管理)だ。常に美味しいエスプレッソを提供する最良のバールでは、美味しい豆・良いマシン・技術だけではなく徹底した維持管理が問われる。良いバールに行くとバリスタが常にエスプレッソマシンやバールカウンター(バンコ)の内側を綺麗にしている光景を目にする。ぜひ、バールを訪れた際はその辺りも見てみてもらいたい。
レバー式のエスプレッソマシンの上にはナポリならではコーヒー抽出器具、クックマがずらりと並んでいる。
来月へ続く
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