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2018年05月28日(月)

ワイン

シチリア人の日常に根付く、マルサラワイン(フローリオ社)

パレルモ空港から右手にシチリアの海を眺めつつ、南西へ車で1時間半ほど行くとマルサラという街が見えてくる。紀元前から存在する歴史ある街だが、それ以上にこの街と同じ名前の名産品で有名な場所だ。

 

琥珀色に輝く、うっとりするような甘美な味わいが特徴的なシチリアの伝統酒、マルサラワイン*。ワインにブランデーを加えて作る酒精強化ワインで、スペインのシェリー酒やポルトガルのポートワイン、マディラワインと並ぶ世界4大酒精強化ワインのひとつ。日本でもティラミスなどの隠し味に良く使われている。(*マルサラワインの作り方等の詳細は記事の最後を参照)

 

 

マルサラワインを代表する造り手にフローリオ社がある。創業1833年。

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▲ライオンの紋章が目を引くフローリオ社のロゴ

 

実は今回シチリアに来た目的は180年以上の歴史を誇るこのフローリオ社の訪問だったが、マルサラの街に立ち寄ったところ昼下がりのバールでまさにフローリオのマルサラを美味しそうに飲んでいるおじいさん3人組に出会った。

 

3人のおじいさんの前にはマルサラ・スーペリオーレ・リゼルヴァ"タルガ"のボトルが置いてある。フローリオ社が7年以上熟成させて作るリゼルヴァタイプのマルサラだ。思わず立ち止まって眺めていると、おじいさんの1人が唐突に「マルサラが料理酒だけだと思っているなら大間違いだよ!」とシチリア訛りで話しかけてきた。

 

「私の息子が日本に旅行に行った時に、レストランではマルサラは料理に使われているだけで飲まれていないと言われたそうだ。いいかい?マルサラは、冬は常温でゆっくり香りを楽しみ、夏は冷蔵庫で冷やしてキュッと飲むんだ。マルサラの美味しさを知らないなんて、日本人は損をしているよ!」

そう言うと近くにあったグラスに"タルガ"を注いで飲ませてくれた。

 

すると隣のおじいさんがすかさず反論をする。

「だめだめ、美味しいマルサラは夏でも常温でこの複雑な香りと余韻を楽しまないと!」

間髪入れずに3番目のおじいさんが、

「私はいつでも氷を一つ入れて、、、」

と割って入る。

 

こうなると止まらないのがイタリア人だ。

それからしばらく喧々諤々の議論が続いたが、最終的には、

「とにかく、まずはいいマルサラを手に入れること、そして自分が一番美味しいと感じる飲み方を見つけることだな!」

ということで話がまとまった。

 

私がお礼を言ってテーブルを離れようとすると、

「君たちもマルサラを飲んでいれば私たちのようにいつまでも元気だぞ!もう50年以上私たちは飲み続けているんだ!」

と最初のおじいさんが笑いながら言う。

 

そして、空になった3つのグラスに、もう何杯目になるかわからない"タルガ"をなみなみと注いでいった。

 

 

1800Lの木樽で5年以上熟成させた、マルサラ・スーペリオーレ・リゼルヴァ"タルガ"。(かつては5年熟成だったが、現在は熟成期間を7年に延ばし、より深みのある味わいとなっている。)

輝きのある美しい琥珀色で、アプリコットや煮詰めたプルーンなどの複雑で甘美な香りが特徴、というのは、このマルサラを知らない人に説明するためには有用な言葉かもしれない。

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▲エレガントなボトルと綺麗な琥珀色が特徴的な“タルガ”

 

 

ただ、あのおじいさんたちにとっては、若いころからずっと飲んでいる“美味しいお酒”でしかない。

 

なぜマルサラをよく飲むんですか?という質問は無粋だろう。

もちろん美味しいのは大前提として、それが彼らの日常だからだ。

そしてそれは、シチリアの歴史ある食文化の一端を担っている。

 

この一件以来、フローリオのマルサラを飲んだことがない方には、

「50年以上飲み続けるシチリアの熱烈なファン3人のお墨付きです」

と言って勧めるようにしている。

 

これから夏にかけての暑い日にイタリアンレストランに行った際には、

「冷えたマルサラはありますか?冷えていなければロックで。」

と、通な頼み方をしてみてはいかがだろうか?

 

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▲街中でマルサラワインを楽しむ男性。

 

 

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★フローリオ社ワイナリーページはこちら↓↓

http://www.montebussan.co.jp/wine/florio.html

 

 

 

 

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